ラヴレス








閉めきっていた障子を開けると、子供達のけたたましい笑い声や叫び声が聞こえてきた。

今までここまで騒がしい場所に出くわしたことのなかったキアランは、目を丸くする。

奥方が居間の障子を開けると、キアランの視界に真っ先に飛び込んできたのは髪をぼさぼさにし、顔を真っ赤にしている「チィネエ」だった。



「チィネエが鬼ー!」
「こわい鬼がくるぞーっ」

どうやら鬼ごっこをしているらしい。

「チィネエ」の周りには、キアランの太股辺りまでしか身長のない小さな子供達が走り回っている。

木製の長い机を壁に立て掛け、邪魔なものがないように片付けられた居間は長方形の形をしていた。

元来は二間続きのそれを、襖を取っ払って一部屋にしているらしい。




「いたたたたっ、背中を蹴るな!」

この真冬に、汗でも掻かんばかりの勢いで子供達と走り回っている「チィネエ」の姿。

キアランは、少しばかり面食らった。


(…嫌味なだけじゃないんだな)

初対面であれだけ言われれば仕方もない。

キアランの中の「チィネエ」の印象は、最悪だった。








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