ラヴレス
「はいはい貴方達、お客様の前ですよ」
奥方がにこやかにそう言うと、様々な動きをしていた子供達が一斉にキアランを見た。
秘書はまだ住職と話を続けている。
キアラン一人に、「チィネエ」含め七人の目が向けられた。
シルバーブロンドの、まるで「天使」のような男を前に、子供達はぽかーんと口を開けている。
なんだか居たたまれない。
「…こんばんは」
とりあえず挨拶してみた。
―――すると。
「喋った!」
「妖精が喋ったぞ!」
掴みは上々だったらしい。
(…昼間は「天使」、夜は「妖精」か)
なんともメルフェンな一日である。
キアランはホテルで買ってきた沢山のケーキを奥方に渡した。
「あらあ、みんな、ケーキですよ」
のんびりとした奥方が笑う。
その一言は絶大だった。
子供達にとって、「妖精」より「ケーキ」のほうがよっぽど素晴らしい魔法の言葉なのだ。
子供達は、様々なお礼を言いながらキアランを揉みくちゃにした。