ラヴレス










「おいしい?」
「うん!」


自分の腕に抱かれるみさとと、そんな彼女へ母親のような笑みを向ける「チィネエ」とを交互に眺め、キアランはまるで自分が「父親」になったかのような錯覚に陥った。




(―――なにを考えているんだ、僕は!)


しかし、慌てて我に返り頭の中でそれを否定する。

みさとなら娘として大歓迎だが、妻に「チィネエ」を迎えるのだけはごめんだ。



(…どうせ、伴侶を自分で選ぶことなどできないのだが―――)











「…おとうさんとおかあさんみたい」





ぽつり。

不意に洩らされたみさとの呟きに、キアランも「チィネエ」も動きをとめた。


「チィネエ」は差し出していたフォークを危うく落としそうになり、キアランは呼吸が停止しかける。










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