恋の方程式

「方程式ってさ、」
「おう。」
「何でアルファベットが出てくるワケ?」

私はずっと気になっていた事を先生に質問した。

「何でって・・・そんなの知るか。」
「知らないの!?数学の先生のクセに?」

私がこう言うと、先生は舌打ちをして、

「じゃあお前、何で日本のこと日本っていうんだ?」

こんな質問を私に投げかけてきた。

「知らないよ、そんなの。」
「え!お前知らねぇの!?日本人のクセに?」

先生と同じような答え方をする私に
私と同じような答え方をする先生。

「そんなの誰だって知らないよ!」
「じゃあ何で方程式にアルファベットが出てくるのかっても誰も知らねぇよ。」

ごもっとも。

「そんなの方程式を見つけた奴にしか分かんねぇよ。」
「そうなんだ・・・」

もっともらしい言葉を私に言った先生は
カウンターの上の夏休みの宿題を指差して、

「ほら、宿題宿題。」
「はぁい。」

私をまた宿題に取り組ませた。

「ん、そこ間違ってる。」
「え!?嘘!?」
「ここ、マイナスが抜けてるぞ。」
「あ・・・ホントだ・・・」

先生が指差した方程式の最後には、
明らかにマイナスが抜けていた。

「先生ってすごいね。」
「何でいきなりそんなの言うんだよ。」

すこし険しい顔をして私を見る先生。

いえいえ、別に疚しい事なんか考えてませんって。

「今ふと思っただけのことです。」
「そうか。」

そのあと、先生は何回か間違いを指摘するものの、
会話を交わすことはほとんどなかった。

なんか気に食わないことでもでもいったかな?


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