氷柱
5分もしない内に、琢磨は安らかな寝息をたてだした。


「…寝たね。」

「…おぅ…」


琢磨はいつも、単独で行動しては突然やってきて意味の分からない事を言って、眠ってしまう。


「こいつさ…上の奴らに何か…ヤバイ事やらされてるらしいぜ」


煙草を灰皿に押しつけて、千明が…眉をひそめつつ呟いた。


「…え?ヤバイ事って…何?」


漠然と『ヤバイ事』って言われたって、どうヤバくて、法に触れてるのかどうかってのもあるし、あたしは間抜けな質問をした。


「薬の…薬の売人」


思わず眠る琢磨を振り返った。


「あくまで噂な…売ってるだけなら…いや、それも駄目だけどさ。何か噂じゃ…琢磨もシャブ食ってるって…」

「それが本当なら、あたし琢磨ぶっ殺す」


簡単な事だ。


今すぐ、琢磨の両腕を見れば調べがつく。


注射のあとがあれば、琢磨は黒だ。


あたしは何がどうあっても…薬だけは許せない。


増して、相手は琢磨。


あたしの心臓が踊っていた。
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