年上。
他力本願、とはまさしくこいつに当てはまるのだろう。

残念だが俺はそんな奴に力を貸してやる義務も義理も無い。

「これから毎日、あの人の授業はさぼる!」

全力でそんな事を宣言されても……。

「そうしたらあの人は、俺の事を心配してくれるはずだ! そしてそこから恋が生まれて二人は数多の苦難を乗り越えて……」

馬鹿じゃねぇの?

正直、失笑するのが精一杯だった。

恋愛小説の読み過ぎだと思うよ。そんなあまりにありふれた事は、起きない。

起こり得る筈がないのだから。

そんな事が起きてみろ。今まで真面目のその人の事を思っていた人たちが、すべて報われることになる。

そんな事があり得るのか? すべての人が幸せになれるというのか?

笑わせてくれる。ああ、下らなさすぎる理由で、付き合ったり別れたりする、三流のケータイ小説くらい笑わせてくれる!

「悪いがそんな馬鹿な道理に付き合っているほど、俺は暇じゃない」

「馬鹿だと!」

「ああ、悪いがそんな胸糞悪い道理を糞真面目に話す奴の事を馬鹿と呼ばざるを得ないからな」

相手に恋をする、というのはより自然に生まれるものだ。

漫画や小説のように、一目惚れから一途に恋をするなんて、あり得ない。

「なら、おまえはどんな風にすればいいと思うんだよ!」

「簡単な話だ。毎日顔を合わせれば良い。学校でなら学校で。休日になれば、市街地で出会うのが好ましい。常に顔を見合わせ続けると、それを当り前と感じるようになるからな。それを恋愛感情と勘違いする可能性もある」
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