年上。
まぁ、気移りの早いこいつがそこまでできるとは思いはしないが。

一応はアドバイスをしておいてやろう。

こんな歪んだ考えは矯正しなくては……。

「それに、第一印象をある程度悪くしておく必要もある。悪印象から良印象になると、そちらの方が相手は好印象となる。これでさらにつり橋効果もあれば、言う事なしなんだが」

あくまでもこれは、恋愛心理を読んでのことだが。

ここに社会心理学、臨床心理学などの他の要素も入れて初めて完璧になるのだろうが、俺にはそこまで専門的な知識があるわけでは無い。

「そうか! 成程わかった。俺はその線で攻めてみるよ」

とりあえずがんばれ。暴走だけはするな。

男がヤンデレになるのだけは見たくないからな。

意気揚々と自分の席に戻っていくそいつの背中を見て、そう願う。

……愛しさ余って憎さ百倍――なんて事はないと願いたい。

あれでも、さっぱりとした性格なので、問題はないと思うのだが……。

一つの映像が頭の中を流れる。

あまり関係はないが、ヤンデレという単語で否でも思い出したのだ。

俺は欠伸をして、読書を再開――しようかと思ったが、その前に授業の号令がかかった。

やれやれ、今日は厄日か?

何の恨みがあって俺から読書を奪うというのだ!

もういい! 今日の授業は全部読書に費やしてやる!

俺は教科書を盾にして、読書を始める。

その後、とある教師に見つかって言われたのは言うまでもないが。
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