年上。
やれやれ、まったくもって面倒だが、何かしらの意見を言ってやるしかないだろうな。

「……俺は、書籍化されたケータイ小説以外なら、なんでも結構だ。ライトノベルだろうが、文芸部が書いたものだろうが、な」

それだけ言えば十分だろうが……さて、どう返って来る?

「なんで、ケータイ小説は駄目なのかな?」

想定していた、返答方式だ。

「書籍化されている分を幾つか読んでみたが、どれも一人称ばかり。尚且つ文章能力はライトノベル以下。しかも、ハードカバーがかなり目立つ。こんなものに一冊千円もかけるなんて、予算の無駄遣いもいいところだ。まぁ、ドラマ化、映画化された奴は興味本位で借りていく奴が多いだろうが」

「成程、彼の意見に反論がある人物は?」

さて、誰が俺に反論してくる?

おや、一人手が挙がった。

「お前は、ケータイ小説が駄目だ、と頭ごなしに否定しているんだけど、ライトノベルのようなオタクが見るようなものと比べたら、随分とましに思えるけど?」

そいつは女子生徒。どうやら、上級生だな。

「確かに、一般的な基準はそうだろうな。だが、ライトノベルが何故、ライトノベルと呼ばれているか、お前にはわかるか?」

「オタクが、見る漫画みたいな小説だからでしょ」

「下らないな、その認識。まぁいい、ライトノベルをオタクが読む小説、と言わせているのはその絵だ。もし、その絵がなかったとしたら、それはただの小説となる。逆に、ケータイ小説に絵が付いたら、それはもうライトノベルだ」

「だが、文章力はケータイ小説の方が……」

「馬鹿か、おまえ。俺は今まで好き嫌いなく小説を読んできた。西村京太郎、内田康夫、横溝正史、赤川次郎、芥川龍之介、森鴎外……俺の趣向の所為で、推理小説が多いが、ライトノベルもそれなりに読んできている。その中で、ケータイ小説は駄目だと言っているのだ」
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