lotlotlot3-血脈の果て-
誕生しなければ、あぁ・・・
廊下を走る音が聞こえる。それも半端な速さではない。無我夢中と言うのがピッタリだった。扉はその勢いのまま開いた。
「お、お、お生まれになりましたぁ。」
メイドらしき格好をした女が叫んだ。
男達は大きなテーブルを囲み、何か会議でもしているかのようだった。そこにメイドの声が響いたのだ。皆が一斉に、彼女を見た。それから、大きな声が上がった。
「生まれたかっ。」
はじめに飛び上がって喜んだのは、父親になったばかりの王だった。
「おめでとうございます。」
「ホント、良かったです。」
周りにいた男達は、大臣達だった。皆、自分の事のように喜び、王の周りに集まってきた。
「ところで、男か?女か?」
王と言う立場上、男を望んでいた。その願いは叶った。しかし、王は戸惑った。
「男の子ですっ。」
「おお、そうか。元気な男の子か?」
王の目尻は下がりっぱなしだ。
「はい、二人とも元気な男の子です。」
「今、なんと言った?」
「?えっ、はい。二人とも元気な男の子ですが・・・。それがどうかされましたか?」
場の空気が一変したのは、少し抜けているメイドでも感じられた。メイドは何かまずい事を言ったのではと気が気でなかった。
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