幕末Drug。番外編-斉藤一-
其の出来事から数ヶ月後、俺は江戸の町を後にした。
−−嗚呼、歯痒い。
剣は使えど、無力な自分。…一体此の世で、何が出来ると言うのだろうか。
江戸の町を去った俺は、将軍護衛の為の浪士が集められていると言う噂を聞き、京まで向かった。
其処には、数百名にも及ぶ侍が集まっていた。
−−しかし。
『…斎藤、じゃないか?』
江戸を離れれば、己の事を知る人物などいないと思っていたのが間違いだった。
『旗本を殺した斎藤、だよな…?』
嘲笑うかの様な表情で、そいつは俺を指差した。
『良くこんな所まで…。お前の様な裏切り者が、幕府を護ろうと言うのか?』
『………。』
−−何も、言うまい。
口は災いの元、それは前に痛い程痛感した。
『…裏切り者は、粛正を受けるべきだと思わぬか?』
そいつは厭らしい笑みを浮かべると、躊躇う事無く刀を抜いた。
−−キンッ!
斬り掛かる相手の刀を、無意識の内に抜いた刀で弾き飛ばす。
『…ッ!!』
一瞬の出来事に、男はうろたえた様子で地面の刀を拾おうとする。
−−これが実践であれば、容赦無く斬り捨てている所だ。