愛の雫
「定期は?」


凪兄の質問から逃げ出すように、ため息混じりに俯く。


「帰りたくない……」


「でも、このままここにいたら風邪引くだろ」


「別にイイよ……」


「そんな事言うなって。帰ったら、カラメルミルク作ってあげるから。ほら、帰ろう」


そう言った凪兄は、優しい笑みを浮かべていた。


あたしは仕方なくため息混じりに頷いて、また歩き出した彼に続いて改札を抜けた。


子供の頃から知っている凪兄の背中が、何だか大きく見えた。


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