愛の雫
電車を降りて改札口を抜けると、凪兄が駐輪場の方へと向かった。


あたしも、とりあえず彼の後を追う。


「ちょっと待ってて」


凪兄は駐輪場に入って行ったかと思うと、すぐに自転車を押して出て来た。


「ほら、乗りな」


「うん」


自転車の後ろに乗ると、あたしの視界が凪兄の広い背中に支配された。


「しっかり捕まってろよ」


無言のまま凪兄の腰に手を回すと、彼はチラッと振り返って優しく微笑んだ後、ゆっくりと自転車を漕ぎ出した。


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