愛の雫
「希咲?」


いつの間にか傍にいた凪兄が、俯いていたあたしの様子を窺(ウカガ)うように呼んだ。


ハッとして顔を上げると、彼は心配そうにしていた。


「大丈夫か?」


「何が?」


平静を装うあたしに、凪兄が困ったように眉を寄せて口元を緩める。


「……いや、何でもない」


「出来たの?」


「うん、俺特製のカラメルミルク」


「ありがと」


優しい笑みでマグカップを差し出した凪兄から、それを受け取った。


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