愛の雫
きれいごとだよ、そんなの……


敢えて声に出さなかったのは、そう言った後に凪兄から返って来る言葉ですらきれいごとにしか聞こえない事を、よくわかっていたから…。


だったら、何も言わない方がよっぽどいい。


だけど…


「希咲は、どうせきれいごとだと思ってるんだろ?」


核心を突いた凪兄の言葉に、また苛立ちが募った。


「……わかってるなら、いちいち言わないでよ」


あたしはため息混じりに言い捨てて、またマグカップに視線を落とした。


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