愛の雫
「いつも言ってるけど、希咲は何もわかってない」


「凪兄だって、別に何も知らないじゃん」


「少なくとも、希咲よりはわかってるつもりだよ」


凪兄は、悪態をついたあたしの言葉を厳しい口調で否定して、真剣な表情のまま続けた。


「おじさんも陽子さんも、希咲の事を大切に思ってくれてなきゃ、心配なんてしないだろ?希咲だって、本当はちゃんとわかってるハズだよな?」


とうとう苛立ちを隠せなくなったあたしは、マグカップをテーブルの上に置いて立ち上がった。


< 28 / 830 >

この作品をシェア

pagetop