愛の雫
目の前に立っている凪兄は、あたしに背中を向けたまま何も話そうとはしない。


あたし達を包む沈黙に重みを感じながら、開けたばかりのホットココアを一口飲んだ。


その温かさにホッとして、また缶に口を付ける。


すっかり冷え切ってしまった体が、少しずつ熱を取り戻していった。


さっきまでくすんだ青が広がっていた空では、いつの間にか顔を覗かせていた太陽が傾き始めている。


「……落ち着いた?」


しばらくすると、黙っていた凪兄がゆっくりと振り返った。


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