愛の雫
あれだけママのカラメルミルクを飲んでいた自分(アタシ)でさえ、ママの味に似た物を作る事すら出来なかった。


そのせいで、作り方を訊いておかなかった事を何度も後悔した。


だからこそ、あたしよりもママのカラメルミルクを飲んだ回数が格段に少ない凪兄が、ここまで似た味を出せる事が不思議で堪らなくなった。


「どうして?」


思わず質問に質問で返していたあたしに、彼が小さな笑みを浮かべる。


だけど…


凪兄は何も言わずにまたあたしに背中を向け、鍋を軽く揺すった。


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