愛の雫
「おばさんに教えて貰ったから」


キッパリと答えた凪兄の背中を見つめたまま、目を大きく見開く。


「このレシピをどうしても覚えたくて、おばさんに頼んで教えて貰ったんだ」


「どうして……?」


やっとの事でそう発したあたしは、凪兄の背中から目を背ける事が出来ない。


鍋を持ったまま振り返った彼は、穏やかな笑顔を見せた。


「大切な子に、ずっと笑っていて欲しかったから」


益々目を見開くあたしに、凪兄が優しい笑みを浮かべたまま続けた。


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