【一話完結×短編集】ビター&スィート
「っ…一応じゃなくて

ちゃんとお返しだから…」




また俯くしかない私にそんな言葉が聞こえてくる




「…ごめんなさい」




もう泣いちゃいそうだよ…



本当は受け取りたいよ



手を伸ばしたいよ…



でも…




「何で…?」




「忘れてって言いました…

だから…受け取れません」




「…忘れらんねぇよ」




…だから…忘れ…―



―…えっ!??!



聞き間違え?



思わず顔を上げた




「…えっ?…あの??」



都合のいい幻聴だよね?




「忘れられる訳ない」




今度は強い口調で言われたけど…


だって…




「だって…無理だって言ってました…」




「えっ?!…何で…知ってんだ?」




あっ…またやっちゃった



慌てて両手で口元を押さえるけどもう遅い



射抜かれるように見つめられて口を開くしかなくて…




「チョコを渡した日に、偶然

…本当に偶然なんです


だけど…さっき呼びに来てくれた友達と

無理だって日野崎くんが話しているのを聞いてしまって…」




「あっ…あぁ…」



なぜだか日野崎くんは1人納得してて…




「それって全部、聞いてた?」



全部?



私が聞いた以外に何があるの?


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