はつおもい



「小牧、気にすんな!」


頭の上から聞こえる声。
やさしい声。

……誰だろう?
うつむいているから顔がわからない。

聞こえてきたのは男の子の声だった。
男の子とはほとんど話さなかったし
仲のいい男友達なんていないから
男の子に声をかけられたコトに私は驚いた。

おそるおそる顔をあげる。

目に映ったのは、指揮者を担当する男の子。

教壇の机から身を乗り出すようにして
私の方を見ている男の子は


桐谷 裕也くん。
(きりたに ゆうや)


私の中で、桐谷くんの存在は
「同じクラスの人」でしかなくて…
同じクラスになって3つめの季節になるのに
どんな人なのか知らずにいた。

背の低い私にとって
大きな桐谷くんは少し怖く見えた。

小学生の時、乱暴な男の子がいて
そのケンカに巻き込まれたことがある。
だから私は、男の子が苦手だった。

桐谷くんも乱暴そうで、怖い。
そんなイメージを持っていた。


……だけど


「さっきさ、どうしたんだ?
 大丈夫か??
 無理はしなくていいからな?
 がんばろうな!」


そう言って桐谷くんは
最後にあたたかくて、やさしい目をして笑った。


その笑顔を見た時
乱暴で怖そうな桐谷くんのイメージは
まるで初めからなかったみたいに

心の中から消えていったんだ。

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