はつおもい
(……あ、れ…?)
周りのみんなが歌っている。
だけど、自分だけが歌っていない。
…ううん。
歌っていないんじゃなくて、
歌えなかった。
喉の奥から声を押し出そうとしているのに
動くもんか、と喉奥で
声がずっしり居座っているみたい。
かすかにでた声は、とてもかすれていて
自分の声じゃないみたいに小さくて低い。
もしかしたら、歌いすぎて
喉の調子が悪くなったのかもしれない。
なでても、こほんと咳をしても
私の「声」は喉の奥から動く気配を見せないでいた。
そうしてうつむいていたからか
視界に先生の足がはいってくる。
ずっと歌わないでいる私を不審に思ったんだ。
見えなくても、先生の視線が
こちらに向けられていることがわかる。
それが重くプレッシャーになって、私の上にのしかかる。
ピアノの伴奏が静かに消えていくまで
私は声を出せなくて、
先生は私の視界から動くことはなかった。