花葬の時間

勢いよくぶつかったせいで、目隠しがずれた。


目が慣れないせいなのか、ただ真っ暗なのか、何も見えない。


バランスを崩して、感覚が揺らいだ。


あ、転ぶな。って思った瞬間、わたしの手を引き上げるように引っ張ったのは、やっぱり冷たい手。



「大丈夫、ニナちゃん?」


ボスンと引き寄せられたのは、多分イチ君の胸だろう。鎖骨らしきものが鼻にあたった。



意外。いつも猫背だから気づかなかったけど、イチ君はわたしより結構背が高い。



ふわりと鼻孔をくすぐる独特の甘い香り。



イチ君は、花の香りがした。



「ニーナーちゃん」



低く響いたイチ君の声に、やっと我に返ることができた。



「………っ、」



わたしはすぐにイチ君の胸を目一杯、力を込めて押した。



「わぁ」



なんて、情けないような力が抜けるような声をイチ君は出した。



「こ、ここどこ!?暗くて何も見えないよ!」



叫んでもイチ君はケロッとして。



「あ、そっか普通の人には見えないよね。ごめんね、すぐ灯かりをつけるね」



ああ、やっぱり来なければよかった。イチ君、君は何者だ。
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