花葬の時間


「だからニナちゃん、そっちじゃないよ」


「ひぁっ」


そう言ってふいに掴まれた右手。冷たい、氷みたいな感触が広がっていく。


そして、イチ君はわたしの前に出て、ぐいぐい手を引っ張ってくる。


イチ君の肩に乗っかった「ニナ」の顔がちょうどこっちを向いていて、なんだか胸やけがした。


「ニナちゃんの手、あったかいね」


「へっ?」



振り向きもせず、イチ君がそんな事言うから変な声が出た。



「そ、そう…?」



だから、あんたの手が冷たすぎるの。だって、体温が全然感じられなくて…。まるで。


そう、まるで…。



「ニナちゃんの体はもっとあったかいかな?」


「し、知らないわよ」



いけない考えが頭を過ぎった。そんな時にイチ君が変なこと言うから背中に悪寒が走る。



やめてよ、そういうの。



「でも手、すごくあったかいよ?」


「ふ、普通だって!」



こわくなってきて、手を離そうと力を込めたら、さらに握りしめられた。イチ君はまるで逃がさない、って言ってるみたいだった。



「いいな。欲しいな」
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