花葬の時間
……耳がおかしくなったのかな、わたし。今イチ君から恐ろしい言葉が聞こえたような。
気のせいかなー。そうだよね、気のせい。気のせい。
「ニナちゃんはねー、初めて見た時から僕のお気に入り」
あは、と感情のない渇いたような笑いをイチ君はわざとらしく声に出した。
おもしろくない。おもしろくなさすぎる。そんな冗談は。だいたい、お気に入りって何よ。わたしはあんたの『ニナ』と同じレベルか。
「じょ、じょうだん…」
お願い、否定してよ。
「冗談?なにそれ」
イチ君は「僕なにかおもしろいことでも言った?」と鼻で笑うかのようにわたしの方をチラリと見た。
「ひっ!」
蝋燭の火がイチ君の顔を不気味に映し出して、とんでもなく怖い。
ええ、おもしろいことなんか、なにひとつ言ってませんとも。
むしろ恐ろしいことをあなたは口にしました。
だいたい、イチ君と初めて会った時って……。
「ニナちゃん、あとちょっとで広い空間に出るから頑張って」
嫌な記憶を遡り、回想しかけた脳内は、イチ君の言葉で中断した。
「お疲れさま。着いたよ」
狭苦しい洞穴を抜けた、その先は。