†Dragon Guardian†
それからさして言葉を交
わすことなく2人が歩を進
めていると、行列の目前
というところで大音量の
ソプラノが響き渡った。
「――あっ、いたいた!!
こっちよこっち~」
その声を聞きつけ弥嘉達
が駆け寄ると、前より幾
分かは進んだ場所で壱加
と紗奈恵が各々汗を拭い
ながら待ち構えていた。
「結構時間くったのな」
「す、すみません。少々
立て込んでおりまして」
そうして紡がれた言葉か
らは不機嫌さが微塵も伺
えなかったものの、元来
の性格も手伝ってか弥嘉
はいかにもばつが悪そう
に飲み物を配っていく。
先程の事情を知らないと
はいえ、弥嘉への配慮が
著しく欠如した脳天気す
ぎる発言にとうとう我慢
ならず、翠は思い切り眉
間にシワを寄せまくし立
てるように話し始めた。
「“少々”どころじゃな
いわよ、全くもう!!弥嘉
ちゃんがあまりにも可愛
いから、盛った豚共が3匹
も群がってきたのよ!?」
「はあああああああ!?」
「えっ、あ、その……」
「しかも、この子の白魚
のような手を不躾に掴ん
できたのよ!?流石に耐え
られなくて、灼熱のコン
クリートへと思いっきり
投げつけてやったわ!!」
間髪入れずに発せられた
耳をつんざくような壱加
の奇声や、はたまた弥嘉
の戸惑う有り様をよそに
翠は興奮のあまり怒鳴り
散らすだけでなく、終い
には当時を再現するべく
制服を着ていることも忘
れ大きく振りかぶった。
それに触発されるように
壱加の目も、時間が経つ
につれてみるみると据わ
っていくのが分かる。
「――今度ソイツらを見
つけたらただじゃおかね
ぇな、のして・叩いて・
ぶっ潰してやらあっ!!」
「あ、あの……お気持ち
だけで充分ですから」
「ふぅん、だからあの時
血相変えて弥嘉を追いか
けたって訳?翠にしては
なかなかやるじゃない。
それに壱加も一肌脱いで
くれるみたいだし、私が
手を下さずとも今のとこ
ろは問題なさそうね」
「さ、さなえちゃんまで
そのようなことを……」
加えて先の呼び掛け以来
口を閉ざしていた紗奈恵
までもが進退きわまる此
の騒ぎに便乗したため、
弥嘉は頼みの綱が切れた
とばかりに情けない声を
上げる羽目に陥った。


