†Dragon Guardian†

その状態であるにもかか
わらず、弥嘉はひたすら意識を保とうとした。


『すみません、お父様。
今は壱加様の一大事です
から、そうも言ってられ
なくなりました』


弥嘉は意を決して両眼を
見開き辺りを見渡す。

しかし変化したところは
特に見当たらなかった。




時間の経過に伴い弥嘉は
次第に焦り出してきた。


『どうしたら、見られる
のでしょうか?壱加様の
緊急事態ですのにっ!!』


しまいには、弥嘉が涙を
滲ませていたため男性は
さらに慌てふためいた。




『――――壱加様っ!!』




彼女は心の中で再び彼の
名を力の限り叫んだ。

すると今度は外の景色が
弥嘉の目に飛び込んだ。




――白いワゴン車

――“堂浜”行きの標識

――見渡す限りの海

――車通りの多い道路

――ナンバープレート

――鍵穴から漏れる光

――薄汚れた長い傘

――ゴルフバック




――縄で縛られた壱加


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