トランプ帝国記
リアはしっかり顔を覚えられてしまった。


逃げたところで仕方ない。


「もう逃げられまい。観念するんだな」


「……くっ」


もうおしまいだ…!!


そんな言葉が頭をよぎる。


それでもリアはとっさに走り出した。


「あっ、待て!」


「慌てるな。顔は見てるんだ。もうあいつの居場所はない…」


年老いた探偵が不適に笑う。




森の中を風が切るように、無我夢中で着た道を走った。


もうダメだ。


顔を見られた以上、奴らが一軒一軒洗いざらい調べればすぐわかってしまう。


そうなれば、施設のみんなにも、危害が…。


探偵が言っていた、『知らせ』という言葉から、自分は売られたんだと直感した。


多分、情報を流したのは、団員の誰か。


足手まといか、もしくは金を取っていたのがバレたんだろう。


こんな状況の中、リアは頭でいろんなことを考えた。

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