トランプ帝国記
施設につくと、一目散に自分の跡を消した。


数えるほどの荷物を持って、後はここを去るだけ。


リアは部屋で眠っている子供たちの顔を最後に見て、何も言わず行こうとした。


すると、一人足りないことに気づく。


「…お姉ちゃ…ん?」


「―――っ。スフィア…」


後ろから、スフィアの声がする。


眠そうに目をこすっていた。


「どこ行くの…?」


「…」


何も言えなかった。


嘘を、つくべきなんだろうか…。


リアはかがんでスフィアの目線に合わせ、じっと見つめた。


「スフィア、お兄さんたちの言うこと、ちゃんと聞くの。ここのみんなは本当の家族と同じよ」


「お姉ちゃんはどこに行くの?」


「ん…?ちょっと出かけてくるだけだから」


スフィアの顔が不機嫌になる。


「スフィアも行く!」


幼いながら変に思ったのか、珍しくわがままを言い出した。


「だめよ。お姉ちゃんだけで行ってくる」


「いや!連れてって」


「…。」


「お姉ちゃんっ!」


「しっ!」


突然リアは気配を感じてスフィアの口を片手でふさいだ。



―――キキィ………バタン…

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