トランプ帝国記
裏に、車が止まる音がする。


もう捜索が始まってるようだ。


もしくは、嗅ぎ付けられたか。


一刻も早くここから離れなければ。


妹のわがままは聞いている場合じゃない。


そう思って立ち上がろうとすると、スフィアはリアの服の裾を両手でしっかり握っていた。


涙でいっぱいの大きな瞳が、リアをじっと見つめる。


リアはその目を見ていられなかった。



一番、離れたくないのは、リアだった。



これからどうすればいいのか、心細さもあった。


でも、それより何より、スフィアの成長を見ていたい。


身内は、自分だけなんだから―――。




そんな思いがぐるぐると巡り、たどり着いた答えは、やっぱりスフィアを置いていくことだった。



リアは握りしめるスフィアの手を振り払い、部屋から飛び出そうとした。


すると、


「やだああ!!行かないで!お姉ちゃあんっ!!」


聞いたこともないような声でスフィアが泣き叫んだ。


「―――っ!!」


この状況で、スフィアが叫んだことで気づかれたらと、リアは気が気でなくなった。


なお泣き叫ぶスフィアをどうすることもできない。
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