ロシアンルーレット【コミカルアクション】
「何が言いたい?」


 そんな事、重々承知の上で、俺はそいつに食って掛かった。


「そのままの意味だがな。お前の安月給じゃ、こんな店で食事したら月給半分消えるだろ?」


 相変わらずそいつは優しい微笑みを崩さない。


「なぁオジサン。はっきり聞いたらどうだ?『お前のとこには汚い金が入ってくるんだろ?』って。『その金でクソ警官のお前は夜な夜な豪遊してんだろ?』って。」


 そいつは、フッと俺を嘲笑うと


「噂通り威勢のいいガキだ。」


 と言って、背筋を伸ばして座りなおして俺に顔を近付けた。


「父親が警視総監だからっていい気になるな。いつまでも父親が抱っこにおんぶでお前を守ってくれると思うなよ。」


 さっきとは打って変わって鋭い目つきで言い、その冷ややかな視線に俺は物怖じした。


 そんな俺を面白がっているかのように、そいつは薄く笑うと上体を引いて元に戻し、


「お前の兄さんは立派な警官だった。残念だよ。」


 そう言うとスッと席を立ち、静かに立ち去った。




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