グレスト王国物語
牢の中に何となく視点をさまよわせると、徐々に目が闇に慣れて来る。

私の目の前には、ジェシカが横たわっていた。

同じ牢に、放り込まれたようだ。

冷たい床に散らばる、絹のようなジェシカのブロンドの髪。

露になった首筋には、紫の生々しい鬱血痕が絡みついていた。

「………。」

ぱくぱくと口が動いて、その口は「彼」の名前を紡(つむ)ぐ。

悲しい夢を見ているのか、それとも、もっと別な何かだろうか。

「…バルベール…様…」

─ジェシカは、眠りながら涙を流していた。

暗い牢の小さな窓から零れる雪明かりが、ぼんやりと漂っていた。
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