コッペリアの仮面 -琺瑯質の目をもつ乙女-

私は。
私は○○。
私の名前は○○。

くるくるくるくる……
頭が回転為る。吐き気にも似た感じが脳を支配為る。

「…………此処は、何処?」

私は意識を取り戻し、目を見開いた。淡い涙が頬を伝う。
私の闇色の虹彩に映し出されたのは外つ国のシャトゥの様な空間。

曲線を多用する繊細で優美なインテリア装飾。此れは確かロココ調の特色だ。調度品や家具も其れで統一されている。白や茶色等の落ち着いた色が基調と成っていて気品に溢れている部屋。

頭が痛い。疼痛が続いている。未だ後頭部を殴打され続けているかの様だ。

私は頻りに痛む頭を撫で乍ら体を起こした。躯中が麻痺しているので困難を極めたが。周囲に目を運ぶと辺り一面に深紅の薔薇が敷き詰められていた。
少し肌寒い。然う感じ、自分の躯を改めて見る。

裸。え……ハダカ?
否、辛うじてランジェリィは着用している。但し、私の下着では無い。
フリルとレースがふんだんにあしらわれた純白の其れ。

下着のみの私に敷き詰められた薔薇。何て悪趣味なのだろう。
丸で私がオブジェの様に飾られていたのだろう。白雪趣味か。
――不愉快だ。

< 11 / 27 >

この作品をシェア

pagetop