コッペリアの仮面 -琺瑯質の目をもつ乙女-
「良い子だ。コッペリア。君は完璧だよ。其の漆黒の麗しい髪。蒼白の肌。吸い込まれそうな程の大きい瞳。東洋人とも西洋人とも取れる端麗な容姿。黒曜石(オプシディアン)のドォル。君ならば成し遂げられそうだ。」
彼の唇がにぃ、と吊り上がる。思わず見惚れて仕舞う。
だが、理解不能。彼は何を言いたいのだろう。会話にすら成ってないのではないだろうか。
私は何故此処に連れられて来たのか、理由が知りたいのに。
解らないって事は大嫌いなフィロソファ。無知は罪で、怠慢よ。予てから然う思ってきた私。
彼は彼で勝手に頷いている。
私の思いを分かる術も無く、頓着等していない。
「私は、コッペリアなんかじゃないわ。」
頭が上手く回転しない。併し虚勢を張って毅然と喋る。
彼は私に一歩近付き私の髪、手、足、各々に接吻をした。
先端が触れるだけの甘い其れ。
酷く戸惑っていた私は何も言えない儘固まっていた。
真っ白だ。
「君はコッペリアだ。僕が造った。最高傑作に成る予定の。」
駄目。彼の表情からは何も汲み取れない。
彼は柔らかい笑顔を私に向けた後、薔薇の華を掌で握り潰した。
豪快に、ぐしゃりと。