もう1人のボク
僕は男子トイレに入ると、ため息をついた。

あの女の子の表情…見覚えがある。

マヒした感情。

崩れた表情。

…ボクが3年前、作り出した『人形』と同じだ。

「オレじゃねーよ」

ビクッと体が震えた。

顔を上げ、目の前の鏡を見ると、ボクがいた。

「オレが作った『人形』は、あんな無様じゃない。それは知っているだろ?」

壁に寄りかかり、イヤな笑みを浮かべている。

「いつの間に外にっ…!」

「お前がピンチそうだったからな。そういう時は許可を得なくても出るさ」

ボクは背を浮かせ、少し歩いた。

そして僕の頬を撫でる。

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