異常人 T橋和則物語
 セロンはベットから飛び起き、眠い目をこすりながら和則の部屋にいった。すると、和則のベットに血がついていた。「どうした?和則」
「血…血…血が…もちろんキ○タマがない」和則はどもりながらいった。
 和則のズボンの股からは血が流れていた。「どこかにぶつけたのか?!」セロンはそういって、ハッとした。そうか……生理か…。彼はひとり苦笑した。確かに、中身はクレイジー和則だが、外見は美少女・魚田みすずだ。生理くらいなるよな。
 しかし、俺が”生理帯”を買ってくるのか…?くそったれめ!迷惑ばかりかけやがって!
  時刻は朝の十時をすぎ、もうすぐ十一時になろうとしていた。竹田医師はもうデスクについているに違いない。セロンは携帯電話をバックから取り出して、溜め息をついた。和則め……くそったれめ!迷惑ばかりかけやがって!結局、俺が全部ベビーシッターみたいなことをやらなければならない。生理の世話など……馬鹿らしい!
 テーブルでは、”生理”の魚田みすずがパンをもぐもぐやっているところだ。
 セロンは携帯電話のプッシュ・ボタンを押しながら、和則から目を離さないように気をつけた。いつもの彼に似合わず、神経質なうずきを感じていた。口はからからで、手も汗ばんでいる。なぜか緊張した。そうヘタな人生を歩んできた訳ではない。生きてる頃は自由闊達だったし、死んでからは天使にまでなれたのだ。しかし、今回の”救済ゲーム”は気乗りのしないゲームだった。なんせ、和則をどう救うのかわからなかったからだ。
 この種の人物、つまり異常人を扱うのは初めてのことだった。ミッシェルのぐさっとくる言葉が、頭の中でぐるぐるまわっていた。ひどく落ち着かない気分だった。自分は、和則を誘拐したのだろうか…?救済してやろうっていう善意があるのに。
 数回ベルがなって、受話器がとられた。受け付けの看護婦らしい女の声がした。だから、竹田医師をと頼んだ。数秒たって、なつかしい声がした。
「竹田です」
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