異常人 T橋和則物語
和則は「ウォーター…」と呟くばかりだ。セロンは無駄な説教だと気づいて、不意に黙り込んだ。猫に物理学を教えるようなものだ。作戦変更だ。しかし…どうすりゃいいんだ。「発作をやめるんだ! 和則!いいかげんにしろ!」
セロンは和則の袖をつかんで、彼の発作をとめようとした。そのとたん、和則は身体を硬くした。石のようにこわばり、まるで死後硬直が始まったかのようになった。パラノイアからはじまった発作が、パニックになるほどだった。彼、いや彼女は首を左右に激しく振り、目をぎょろぎょろさせた。
和則の様子の異様さに、セロンは思わず手を離して、一歩あとずさった。和則がすでに自分だけの世界へ、誰もはいっていけない世界へ逃げ込んでしまったことを悟った。甘い囁きやキャビアでも、和則を連れ戻すことはできないだろう。一秒が過ぎ、また時間がすぎた。セロンは間が抜けた顔で和則を見ている。和則は狂った。また、狂った。
こうなりゃ最後の手段だ! セロンが手を伸ばそうとすると、和則は自分の手を口の中にいれ、噛みはじめた。異様な光景である。
「和則、おれを殺す気か」歯をぎりぎりいわせながら、セロンはどなった。「お前がまともにならないと……お前を救うことはできないんだよ!」
和則は首を左右に振り続けた。ウォーター。ウォーター。ウォーター、ウォーター、ウォーター、ウォーター。全身から水という言葉を発して、和則は石のように固まった。
パニックになっているのは明らかだった。セロンは吐き気をもよおした。
「この馬鹿! やめろ!」セロンがどなった。「やめろっていうんだ!」胸がムカムカした。こういう光景を見るのは生まれて初めてだった。
しかし、和則にはセロンの言葉に耳をかす意思も、余裕もなかった。必死に、自分の手の甲を噛んでいた。壮絶な光景だった。とまどいのあまり、自制心を失ったセロンは、癇癪をおこした。セロンはこぶしをふりあげ、”殴るぞ”というポーズをとった。しかし、和則は手を噛んで、目をぎらぎらさせているだけだ。
セロンは和則の袖をつかんで、彼の発作をとめようとした。そのとたん、和則は身体を硬くした。石のようにこわばり、まるで死後硬直が始まったかのようになった。パラノイアからはじまった発作が、パニックになるほどだった。彼、いや彼女は首を左右に激しく振り、目をぎょろぎょろさせた。
和則の様子の異様さに、セロンは思わず手を離して、一歩あとずさった。和則がすでに自分だけの世界へ、誰もはいっていけない世界へ逃げ込んでしまったことを悟った。甘い囁きやキャビアでも、和則を連れ戻すことはできないだろう。一秒が過ぎ、また時間がすぎた。セロンは間が抜けた顔で和則を見ている。和則は狂った。また、狂った。
こうなりゃ最後の手段だ! セロンが手を伸ばそうとすると、和則は自分の手を口の中にいれ、噛みはじめた。異様な光景である。
「和則、おれを殺す気か」歯をぎりぎりいわせながら、セロンはどなった。「お前がまともにならないと……お前を救うことはできないんだよ!」
和則は首を左右に振り続けた。ウォーター。ウォーター。ウォーター、ウォーター、ウォーター、ウォーター。全身から水という言葉を発して、和則は石のように固まった。
パニックになっているのは明らかだった。セロンは吐き気をもよおした。
「この馬鹿! やめろ!」セロンがどなった。「やめろっていうんだ!」胸がムカムカした。こういう光景を見るのは生まれて初めてだった。
しかし、和則にはセロンの言葉に耳をかす意思も、余裕もなかった。必死に、自分の手の甲を噛んでいた。壮絶な光景だった。とまどいのあまり、自制心を失ったセロンは、癇癪をおこした。セロンはこぶしをふりあげ、”殴るぞ”というポーズをとった。しかし、和則は手を噛んで、目をぎらぎらさせているだけだ。