異常人 T橋和則物語
セロンはその途端、黙ってしまった。言葉がでなかった。間抜けみたいに「アニメがみたい」などといえるだろうか。だが、ウォーターマンだかなんだかをみなくては、和則が爆発してしまう。セロンは考えた。そして、頭を働かせた。
「今回の訪問の目的…は…ね」セロンはきびきび続けた。「由美ちゃんのテレビの受信機を調べろって社長が。そして、指定された……番組を短時間だけど見せてもらう。それだけなんだ」
「社長が?短時間って……どれほど」
セロンの背後の物音が大きくなった。「三十分くらいかな。とにかく社長が…」由美釈子はセロンの肩の向うをのぞきこみ、背後で何がおこっているのか見ようとした。彼はすばやく動いて、由美の視線をさえぎった。彼、セロンにも背後で何がおこっているのかわからなかったが、正常なことがおこっている訳はなかった。
「みすずちゃん……どうしたの?」釈子はきいた。
セロンにはうしろを振りかえる勇気がなかった。冷や汗が流れるのを感じた。「いや別に……かず…みすずちゃんは何でもないよ。ただ、サンプル番組を見るようにいわれてるんだ。なんていったかな?社長が。アニメを」
釈子の表情は今や、好奇心に一種の恐怖がまじったようになり、セロンの背後でとんでもないことがおこっていることを告げていた。
「みすずちゃんは番組をみて……その…」ついに失敗したことを悟って、セロンの声はしぼんだ。釈子の目は魚田みすずこと和則に釘付けになり、信じられないという表情で、和則をみていた。セロンは暗い顔で、ゆっくり振りかえった。
和則は敵陣へドリブルで突撃しているところだった。架空のピッチで、パスを送る。そして、パスは「ペレ、シュート!…キーパーに弾かれる。そこで…」和則はいった。「そして、和則、ヘッド!…ゴール!」言葉にあわせて和則は動作するのだが、動きはぎこちなく、滑稽だった。「ゴール!ゴール!ゴール!ゴーーーールーーー!」
「今回の訪問の目的…は…ね」セロンはきびきび続けた。「由美ちゃんのテレビの受信機を調べろって社長が。そして、指定された……番組を短時間だけど見せてもらう。それだけなんだ」
「社長が?短時間って……どれほど」
セロンの背後の物音が大きくなった。「三十分くらいかな。とにかく社長が…」由美釈子はセロンの肩の向うをのぞきこみ、背後で何がおこっているのか見ようとした。彼はすばやく動いて、由美の視線をさえぎった。彼、セロンにも背後で何がおこっているのかわからなかったが、正常なことがおこっている訳はなかった。
「みすずちゃん……どうしたの?」釈子はきいた。
セロンにはうしろを振りかえる勇気がなかった。冷や汗が流れるのを感じた。「いや別に……かず…みすずちゃんは何でもないよ。ただ、サンプル番組を見るようにいわれてるんだ。なんていったかな?社長が。アニメを」
釈子の表情は今や、好奇心に一種の恐怖がまじったようになり、セロンの背後でとんでもないことがおこっていることを告げていた。
「みすずちゃんは番組をみて……その…」ついに失敗したことを悟って、セロンの声はしぼんだ。釈子の目は魚田みすずこと和則に釘付けになり、信じられないという表情で、和則をみていた。セロンは暗い顔で、ゆっくり振りかえった。
和則は敵陣へドリブルで突撃しているところだった。架空のピッチで、パスを送る。そして、パスは「ペレ、シュート!…キーパーに弾かれる。そこで…」和則はいった。「そして、和則、ヘッド!…ゴール!」言葉にあわせて和則は動作するのだが、動きはぎこちなく、滑稽だった。「ゴール!ゴール!ゴール!ゴーーーールーーー!」