ランク国物語
 「お前一人で我々を相手にするのか?気は進まないが…斬るぞ。」
 「もちろん僕だけじゃないさ…。」螺旋階段から足音が聞こえ始めた。下りてきたのは二人の男で、片方の男の顔を見たままヤース達は固まった。その男は、黒髪で頬に深い切り傷を持ち、かつてベルカント卿と、呼ばれていた男であった。
 「紹介しよう。私の最高傑作である。ベルカントで、こっちがガイアント。ベルカントはご存知ですよね。ガイアントはもともとこっち側の元将軍だった人だよ。」ヤースは怒りで体が震え、腹の底からの低く、冷たい声で、
 「彼等に対する侮辱許すわけにはいかない…。」ヤースは、敵から奪った剣を改めて持ち替え、一歩でベルカント卿の懐まで跳び、切り上げた。が、ベルカント卿は抜刀して受け止めた。ヤースは一気に退き、
 「本人なのか…?」
 「もちろん本人さ。ただし…肉体強化した死体だけどね。本来人は無意識に力をセーブしてるのは、知ってるよね?自分自身を壊しちゃうからね。だけど、これらは、そういう所が無いから100%の実力を発揮できる分化け物じみてるよ。」
 「ダン卿…こんな形の再会になってしまうとは…残念だ…。私のために…くっ。」ベルカント卿は頭を抱えたが、すぐに元に戻った。
 「では、始めようか。実験を!」螺旋階段から下りてきた男が言った言葉が合図となり、螺旋階段の途中から人が飛び降りてきた。ヤースは一瞬だけ意識を上に向けた、その一瞬でベルカント卿とガイアントがヤースの左右に動き、ベルカント卿はヤースの左側から移動の勢いで左上から右下に、ガイアントはヤースの右側に移動し、足で踏ん張って左下から右上に剣を振るった。ヤースはベルカント卿の剣を受けながら体当たりし、次にガイアントの剣を受けようとしたが、一瞬でも意識を別の所へ向けた分動きが遅れその遅れがガイアントの剣を受けられず。剣を持ったまま右肘から下が弧を描きながら飛び、ヤースは右腕を押さえながら間合いから逃げた。ヤースは部下達に目を向け舌打ちした。敵と戦っている部下は、半数になっていた。ヤースは敵の剣を再び奪い、敵を一人づつ切り倒しながら、
 「引くぞ!」ヤースが指示した瞬間に一気に出口に向かって突撃した。
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