ランク国物語

　「死にかけたとは、どういうことですか？」
　「すぐに分かる。」と、エレジーは塔の方を指差して言った。まるでその場にいる全ての人に見せつけるように、視線が集まったのと同時に塔が光に包まれ輪郭が消えた。光が無くなっても、塔の姿が無くなっていた。崩壊ではなく、まるでそこに何もなかったように消失していた。その後に爆発音が聞こえた。
　「レバーをいじてから外の様子や怪しいとこを探してたらな、あれに巻き込まれたんだよ。私としたことがつまらんミスをした。」
　「さっきの塔には、ベルカ…。」ヤースが言い終わる前に、
　「あぁ…いたよ。」エレジーは辺りを見回して、
　「封印が解けたはずなんだが…。」
　「エレジー様！足元が光だしましたぞ！」エレジーは、その場にいる人達に注意を促し戦闘体勢に入った瞬間、視界が真っ白になり所々で悲鳴が上がった。視界を奪われたのは一瞬だった。だがその一瞬により半数が地に伏していた。ヤースは地に伏している物達に近づき、
　「息はしているので、死にはしないでしょう。」
　「ここは…どうなっているんだ…。」ヤースはエレジーの言葉を聞き辺りを見渡した。そこは、雲一つない青空の下で、一切人口物もない平原にいた。風が吹けば青々した草が掠れて心地良い音をたてた。
　「ようこそ。過去の英雄に関係していた人達。今立っている人は、共に戦った戦友からその魂を受け継いだ人のみだ。」ヤースは構えながら、
　「何者！姿を現せ！」
　「私はな戦うつもりはないのだよ若者よ。それに片腕では相手にならんよ。早く付けたまえ。何なら私が付けてやろうか？『水』とは違い少しばかり痛くなるがな。」ヤースから一歩半前の空間が歪み、徐々に人が姿を表してきた。ヤースは咄嗟に切り掛かったが、全く気にせずに、話し出そうとした時、ヤースの剣が届いた。
　「物は大事にしなさい。私に普通の剣は効かんよ。」ヤースの剣は刃の部分が溶けていた。
　「私の名前はフェイだ。火のレイジリアンを受け継いだ者だ。」幼く華奢な体つきの子供が言った。
　「お前達は何をしようとしているのか分かっているのか？お前達の国王のタガールが何をしようとしているのか知っているのか？」
　「何を偉そうに！先に攻撃を仕掛けてきたのはそっちだろうが！」
　「どうかな…。今考えてみると自作自演だったとも思えるんだ…。」