ランク国物語
 「まずは、タガールを援護し距離を取るぞ!」ラックは走り出しながら指示を出した。そして、剣の先を上半身裸の色白男に向け、
 「食い尽くせ…黒竜!」剣の先から黒き竜が飛び出した。が、上半身裸の色白男に届く前に消え去った。それを見たラックは、出来る限り遠くに跳んだ。
 「兄上?!どうしてここに?」
 「お前に良いトコ取りはさせられんからな。それに…お前には頭にきたから一発殴らせろ。」タガールははにかみ、
 「では、死ねないですね。」ラックは上半身裸の色白男を剣で指しながら、
 「奴の…レイジリアンの力はどの程度戻っている?」レイジリアンはラックの方に手をかざし、一瞬空間が歪んだように見え、ラックは慌てて跳んで逃げた。その時に泥が跳ね上がったが、泥はどこかに消えた。ラックが立ち上がりレイジリアンを見た時には、レイジリアンを針が全方位から飛んでいた。レイジリアンは何もないかのようにスターツの方に駆け出した。針は当たってはいるが、傷つける事が出来ずに消えていった。レイジリアンは何かを持っているように手を握っていた。
 「どうやら完全に戦いのカンを取り戻しているようだな。」
 「兄上…それどころか、『無』の力が強くなっているようで、かなり力を圧縮して使わないと殺すどころか傷つける事も出来なかったです。」
 「我々の敗北する要素ばかりではないか…。」
 「救いとしては、治癒能力が今の所弱いようで、動きが大分鈍っています。」
 「だが、奴が根を上げる前にこっちはくたばってそうだな。」レイジリアンがスターツに飛び掛かろうとした時、横から円錐状の火球がやや上から飛んできて、レイジリアンの左肩に刺さり吹き飛んだ。スターツは飛んできた方を見ると、丘の中腹辺りにフェイが立っていた。
 「こっち見るぐらいなら奴から目を離すな。」フェイはスターツを怒鳴った。レイジリアンは低く唸りながら立ち上がり、左肩から血が流れているのを見て、
 「貴様ら…よくも我の体に…。血が流れて…殺す。八つ裂きにしても我の怒りは消えぬ。貴様らは自分達の私利私欲のために我を謀りおって!赦さん…赦さんぞ!」
 「ちっ!知性が戻ってきちまったうえに記憶も戻ったか…。」タガールは愚痴りながら、
 「これからが本番だ!気を引きしめよ!」タガール達の目の前でレイジリアンの背中から翼が生え宙に浮かんだ。
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