SleepingBeauti
アパートにつくと、玄関の前で彼女がうずくまっていた。

ぶるぶると身体を震わせて、コートの襟で顔を隠すようにしていた。

ぼくは恐る恐る近づいて声をかけた。

「どうしたの?」って。

たったその言葉を発するだけでもぼくの心臓はどくどくと、脈うっていた。

彼女はゆっくりと、顔をあげて言った。

「鍵が合わないの」だから家に入れないって………

寒さに震える彼女がとても可哀相に思えてしまい、ぼくは他人とは関わらないという誓いを忘れ、言った。

「とりあえず、家にくる?」って。

彼女はためらうことなく、「うん」と、言った。

よほど寒かったのだろう。
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