SleepingBeauti
ぼくがのぞみに今日から仕事だと告げたのは、出勤一時間前になってからだった。

のぞみは正月特番のお笑い番組を表情一つかえずにみていた。

おもしろいのか、おもしろくないのか、てっきり表情からうかがえない。

いっそ、チャンネルを突然にかえて、のぞみの態度をみてみたい衝動にかられた。

が、そんなことをするまでになく、のぞみの落胆する声を聞けた。

ぼくが、出勤の準備をしていると、のぞみは振り返り「どこかに行くの?」と、きいた。

「今日から仕事だから」と告げると、のぞみは「もう仕事なの」と、落胆した。

「淋しい?」と、冗談がてらにきいてみた。

淡い期待して。

「暇じゃない、優のせいで昼夜逆転してるから、寝れないし、それにコンビニにもいけないじゃない」ムスッとむくれた。

酷い言われようだった。

それから少し押し黙っていたが、のぞみは人差し指をたてて、何かひらめいたように言った。

「河内さんと会うんだよね?だったら、伝言があるんだ」

「何、伝言って?」

「ううん、後で、メールするから携帯おいていって」

< 95 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop