渇望
詩音さんと出会ったのは、あたしが高校を卒業して、この街に来てすぐの春。


実家はほぼ勘当のような状態なので、ひとりでは家を借りることも出来ず、困りあぐねていた。


そこで手っ取り早いのは、夜の仕事。


けれどもあたしには、キャバクラなんて向いていないことはわかっていた。


その頃は色んな店に体入だけして当面のお金を稼いでいたが、利益にもならないような客にまで愛想をするなんて、馬鹿馬鹿しいとしか思えなかったのだ。


だから風俗の方が良いだろうと、大した決意もなく思っていた。


そんなある日、コンビニで夜の情報誌を眺めているあたしに声を掛けてきたのが、詩音さんだった。



「ねぇ、さっきからずっと見てたけど、仕事探してるの?」


「……は?」


「あたしも一応お店しててね、でもまだ始めたばかりだから、女の子探してるんだ。
だから良かったら、話だけでも聞いてくれないかな。」


今まで出会った人の中で、一番綺麗なんじゃなかろうか、という彼女に、その店の質の高さを感じ取った。


だから説明だけなら、ということで、あたし達は近くのコーヒーショップに入った。



「簡単に言えば、ホテル・ヘルスのお店なんだけどね。」


要はお客とホテルで待ち合わせ、そこで性行為をして帰ってくる、というだけのこと。


店を介しているので援助交際なんかよりずっと危険度も低く、何より自分の取り分の多さには驚いた。


一発ヤるだけで、風俗なんかよりずっと稼げて、もちろん完全日払い。


予約が入っていなければ、基本、どこで何をやってても良いし、ドタキャン以外なら、当日に休むのもアリだと言う。


つまりは無駄に拘束されなくても良いということで、それは魅力的なことだった。


だからあたしは、ふたつ返事で詩音さんの誘いに乗ったのだ。


後悔なんて、微塵もしていない。

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