渇望
「あぁ、やっぱりキミは綺麗だね。
百合を想わない日は一日とてなかったよ。」


感嘆するように、彼は艶っぽい息を吐く。


綺麗だなんて、どこを見て言っているのかはわからないけれど。


あたしの上で、彼の腹の肉が上下に揺れ、醜い行為を更に知らしめてくれているかのよう。


感じてもいなくせに、あたしは喘ぎ声ばかりを漏らしていた。


この人はノーマルプレイで終わってくれるが、中には危ない客もいる。


まぁ、さすがに店を介しているので危険な道具を使われることはないが、でも痛い思いなんてもう何度経験したかも思い出せない。



「百合、愛してるよ。」


だからいつもこの一瞬だけは、心すら捨て、ダッチワイフのような人形になりたかった。


そしたら少なくとも、あたしを愛しているのだと言うこの客に対しても、同情の念さえ抱かなくても済むのだろうから。


行為を終えると、汗ばむ体で抱き締められた。



「なぁ、百合。
どうしても、店を介さなきゃダメなのか?」


「ごめんなさい。」


「じゃあせめて、携帯の番号だけでも教えてほしい。」


「ごめんなさい。」


あたしはいつも、高田さんに対して、謝ってばかりいる気がする。


お金はいくらでも出すと言ってくれるが、裏引きがしたいわけでも、愛人になりたいわけでもない。


何より、仕事は仕事、で終わらせたいのだ。


例えどんなに愛されたって、あたしはそれを返すことなんて出来ないのだから。

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