渇望
辛いのか、と聞かれれば、辛いのかもしれない、と答えるだろう。


同じ行為をするだけなら、あたしを物のように、ぞんざいに扱ってくれれば良い。


だから心を求められると、どうすることも出来なくなる。


薄皮一枚の皮膚なのに、どうしてそれを触れ合わせるだけで、心が通ったような気になるのだろう。


少なくともあたしには、そんな綺麗な感情はないというのに。



「風呂に入ろうか。」


親子ほども年の離れたこの人と、お風呂で他愛もないことを話しながら残りの時間を過ごすのは、いつものこと。


彼はしきりにあたしに対する愛の言葉を並べてくれ、だからやっぱり居心地は悪い。


ふと、瑠衣に会いたいと思うのは、何故だろう。


きっと心のどこかであの人は、あたしを責めないんじゃないかという想いもある。


ただ、あの瞳を思い出すと、無性に悲しくさせられた。



「また会おうね、百合。」


お風呂から出て、そんな言葉と同時に響いたのは、時間終了を告げるアラームだった。


高田さんは心底辛そうな顔をして、あたしに数枚の諭吉を手渡してくれる。


うちの店は、現金手渡し主義。


これが一番現実的で、客をなるべく勘違いさせないためなのだと、詩音さんが言っていた。


あたしはまたごめんなさい、なんて言い、受け取ったそれをポーチに入れる。


高田さんは更にあたしにお小遣いまでくれようとしたが、でもそれも丁重に断り、ホテルの一室を後にした。


待ち構えているのは、ジローの車。


それに乗り込み、事務所に戻ってポーチを詩音さんに渡し、あたしの取り分を貰ったら仕事は終わりだ。


こんなあたしでも、一応うちの店の稼ぎ頭らしく、誰かの役には立っているのだろうとは思うけどれど。

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