渇望
あの後、更にもう一件仕事をし、やっと終わったのは夕方も過ぎたような頃だった。
香織は大学があるのでバイト感覚だが、あたしは毎日のように働いている。
だから帰る頃にはもう、疲弊した自分を隠せなくなるのだ。
「百合、お疲れ。」
詩音さんからお金を貰っていると、事務的に声を掛けてきたのはジローだった。
彼とまともな会話をしたことなんて、多分、数えるほどしかないだろう。
「真っ直ぐ帰るなら通り道だしついでに送るけど、どうする?」
「今日は良い。」
「そう、じゃあまた明日。」
「はいはい、お疲れ様。」
これもまたいつも通りで、ロボットみたいだな、と笑いそうな気持ちを堪え、ひとり事務所を後にした。
あたしはクリスタルで一年半も働いているのに、この店のことについて何も知らない。
詩音さんのこともそうだが、ジローのことも、他の女の子のことも、もちろんお客のことも。
香織は例外だとしても、あまり興味なんて湧かなかったから。
ただ、体を売るなんて、それなりの理由があるんだろうな、と思う程度だ。
やっぱり人の傷口には触れたくはなかった。
胡散臭い街を歩き、人の波に酔いながら、タクシーを拾った。
香織は大学があるのでバイト感覚だが、あたしは毎日のように働いている。
だから帰る頃にはもう、疲弊した自分を隠せなくなるのだ。
「百合、お疲れ。」
詩音さんからお金を貰っていると、事務的に声を掛けてきたのはジローだった。
彼とまともな会話をしたことなんて、多分、数えるほどしかないだろう。
「真っ直ぐ帰るなら通り道だしついでに送るけど、どうする?」
「今日は良い。」
「そう、じゃあまた明日。」
「はいはい、お疲れ様。」
これもまたいつも通りで、ロボットみたいだな、と笑いそうな気持ちを堪え、ひとり事務所を後にした。
あたしはクリスタルで一年半も働いているのに、この店のことについて何も知らない。
詩音さんのこともそうだが、ジローのことも、他の女の子のことも、もちろんお客のことも。
香織は例外だとしても、あまり興味なんて湧かなかったから。
ただ、体を売るなんて、それなりの理由があるんだろうな、と思う程度だ。
やっぱり人の傷口には触れたくはなかった。
胡散臭い街を歩き、人の波に酔いながら、タクシーを拾った。