かんのれあ
すると、頭の中の霧が晴れてきたように、あたしの中でストーリーが動き出した。


「あ、じゃあ相手役の男の子は、むしろ評論家を目指してる、卵っていうのはどうですか?」


「おぉ、いいじゃないですか。なかなか面白そうだと思いますよ」


そう言って、深夜遅くまであたしに付き合ってくれた上、

「もし土日に直しが完成したら、自宅の方に送って下さい」

と、河野さんは自宅のFAX番号を教えてくれた。


「すみません、せっかくのお休みなのに」


山崎さんの"時間の無駄"という言葉が頭に残っていて、つい弱々しく言ってしまった。


「いいよ、せっかく乗って来たんだから、このまま本出したいもんね。期待してます」


そしてあたしは、お礼と挨拶をして電話を切った。
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