%短編:侵された体%

立とうと努力しているのに、

逆に体がどんどん湯船の中に沈んでいく。


うそ!?

なんで?


ずるずると、まるで誰かに引きづられていくよう。

浴槽のふちに両手をひっかけ、全力で体を支えているのに、

底なし沼に沈むように、あたしの体がどんどん水面へと入り込んでしまう。


と、突然、両腕に痺れるような感覚が襲ってきた。

浴槽を掴んでいる指が、まるで誰かに引き剥がされるように、

一本一本、伸ばされひらいていく。


あたしの意思とは、まるで正反対に。


もがけばもがくほど、体がすべり、湯船と水平になってしまい、

顎の先端までが、お湯につかった。


やだ、溺れちゃう!

どうしよう!!


ずるずると沈む体になす術もなく、

ついにあたしの頭が湯船に沈み始めた。



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