%短編:侵された体%
不思議な感覚だった。
耳で感じる音とは違い、体全身に染み渡るような声。
その声と、頭の中で会話をしている自分。
そして、そのことに全く違和感を感じないあたし。
まるで、ずっと昔からそうだったみたいに、
あたしはこの声に、どこか懐かしささえ覚えた。
口元はすでに水面下。
鼻の中にもお湯が流れ込んできた。
だめだ。
あたし、体をとられる。
徐々に苦しくなる呼吸とともに、
意識が遠くなっていく。
遠くでママの足音を聞いたような気がして。
そのまま、視界が真っ暗になった--。