Escape ~殺人犯と私~
輝りを放ちながら



確実に私を狙っていた。




まるで私の中に恐怖が湧き出るように、震えが止まらなくなった。



少年は私にナイフを向けたまま、動けない私へと歩み寄ってきた。

少年の持つ、血生臭いナイフの肌が私の頬に当てられて

氷の様に冷えたナイフに、私は更に凍えたように硬直した。



少年は限りなく近寄って来て

服が触れるか否かの位置で、足を止める。



つい数分前に私を落ち着かせてくれた彼の匂いが、死の匂いだと感じた時


少年が、私の耳元に唇を寄せた。





「逃がさないから……」




ささやかれた冷淡な言葉


DVのトラウマと被る行動に



私は逃げる選択肢を失ってしまった。




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